IMEにまつわる問題と新しいツールについて
最近は仕事が立て込んでいて、なかなかブログの更新ができませんでしたが、その間も2つのテーマで業務効率化のためのツールについて少しずつ開発を進めていました。
今日は、その一つの「DIME」について紹介します。初期バージョンはすでにほぼ完成しており、現在テストを兼ねて日々業務の中で実際に使っています。
1.発端
元々、IMEの表示がタスクトレイに小さく表示されるだけなので、日本語入力がONなのかどうかが分からずに入力ミスしてしまい、入力し直しするという問題は、未だに良い解決方法は無いようです。
ホームポジションキーパーでは、フォーカスしているウィンドウ全体の色をIMEの状態で変更するという今までに無い方法で表示し、入力ミスをすることは無くなったのですが、それでもいくつか問題だと思う点があります。
また、ホームポジションキーパーの機能の一部としてではなく、独立したものにしてほしいという要望もありましたので、いつかはIMEの表示ツールを独立したものとして作り直したいと考えていました。
今回、IME状態の表示方法ツールを開発するにあたり、現状はどのようになっているのか、どのようなツールがあるのかを調べて、それらの問題点を解決できるようなツールを目指すことにしました。
2.Windows10の標準的な表示方法
そもそも、標準のWindows10ではIMEの扱いはどうなっているかというと、マイクロソフトもこの問題をかなり意識しているようで、IMEに関する機能追加が行われたり、機能追加の予定が話題になっています。
一つは、IMEの切り替え時に画面中央に「A」や「あ」が大きく表示されるようになり、切り替えたことが非常に分かりやすくなりました。
しかし、この機能は一部のユーザーには不評で、この表示をしないようにする方法についての記事がネットに多く掲載されています。なぜ、この表示が嫌われるかというと、表示が大きくて入力の邪魔になると感じるユーザーが多いからです。IMEの状態表示は、このように「分かりやすい」と「邪魔になる」といった矛盾をどう解決するかがポイントのようです。
またマイクロソフトはIMEの切り替え方法をMacと同じように「IME ON」と「IME Off」をそれぞれ別の専用のキーに割り当てることを検討していることもニュースになりました。元々、別のキーに割り当てれば、どちらの状態になっていても確実にIMEをON、OFFすることができるようになります。この方法は非常に合理的ですが、2つほど問題が出てきそうです。
一つは、しばらく操作していないと、結局タスクトレイを見なければ状態は分からないので、改めて「IME ON」または「IME Off」のキーを押す必要があります。キーを一つ押すだけなので、それほど負担にはならないでしょうが、ちょっとしたストレスになりそうです。
もう一つは、この操作に「無変換キー」「変換キー」を割り当てることが予定されている点です。そうなると、このようなキーを前提に作られたキーボード操作ツールが使えなくなりますし、そもそもUS配列キーボードではそのようなキーがないので使えそうにもありません。
3.フリーソフトでの表示方法
次に、IME表示方法に関するツールについてどのようになっているかを見てみます。
(1)キャレット変更方法
私が理想的だと思うのは、キャレットの色を変更したり、キャレット付近にIMEの状態を表示する方法です。邪魔にならないですし、テキスト入力している注目点付近に表示されるので見逃すことはありません。
ただ、この方法には致命的な問題があります。それはキャレットの色を変更したりキャレット付近に表示することができないアプリが多く存在することです。
最近はブラウザで動作するアプリも多くなっているので、なおさら使える機会が減ってきているようです。いくら良い方法でも、動作しなければ使いようがありません。
(2)マウスポインター付近への表示
これは分かりやすく表示し、かつ邪魔にならないようにマウスポインタ―を好きな位置において、その付近にIMEの状態を表示しようというものです。
当たり前ですが、このツールを効果的に使うには、常にマウスポインタ―の位置を調整する必要があります。実際に使ってみると、タスクトレイ表示よりはましになるといった程度で、根本的な解決にはならないです。
(3)タスクトレイに表示
タスクトレイでの表示を目立つようにするものもありますが、これも根本的な解決にはなりません。
(4)ウィンドウや画面の特定位置に表示する。
入力がフォーカスしているウィンドウのタイトルバーや特定の位置に表示するものもあり、かなり良い解決方法だと思います。フォーカスしているウィンドウに表示されるので、見逃すことが少なくなります。
問題としては、大きく表示すると邪魔になり、小さい表示にすると見逃しやすいという点です。特にウィンドウが最大化している場合は、入力の注目点と表示の位置がかなり離れてしまい、見逃しやすくなります。
(5)ウィンドウ全体の色を変える
入力がフォーカスしているウィンドウの全体の色を変えるというホームポジションキーパーに組み込んだ方法です。見逃すことは絶対にありませんが、色が変わることが気になるという意見もありました。
この気になるという点をどうやって軽減するかが今回のツール「DIME」のテーマとなりました。
3.見逃さない+邪魔にならない=必要な時だけ表示する
ウィンドウ全体の色を変えることにより「見流さない」ことは完全に満足できますが、色が変わること自体が邪魔に感じるという矛盾をどう解決するか悩みましたが、思いつけば簡単なことでした。
それはIMEの状態を知りたいのは、どのようなタイミングかがポイントでした。つまり「今のIMEの状態が分からないとき」がIMEの状態を知りたいタイミングだということです。逆に言えば、IMEの状態が分かっているときには表示は不要になるということが大きなポイントだと気が付きましまた。
そこで、DIMEは次のような表示方法を考えました。
(1)IME状態はウィンドウ全体の色を変える
これはホームポジションキーパーで採用した方法と同じです。今回は、ウィンドウの枠の色だけを変えるオプションも追加しました。「見逃さない」点はやや劣りますが、「気にならない」点を重視するユーザーは、このオプションを好むでしょう。
(2)表示するタイミング
表示するタイミング=表示を消すタイミングが大きなポイントです。私の知る限り、タイミングにより表示を消すような仕様のツールはいくつかあるのですが、なぜかIMEを切り替えてから一定時間経過すると表示が消えるものばかりでした。これは「表示が気になる」ことを解消するためでしょうが、しばらく時間が経過するとIMEの状態が一目で分からなくなるので必要なときに状態が分からなくなるという欠点になっています。
よく考えてみれば、文字入力をしている間は、当然IMEの状態を知っているので、表示は不要です。つまりキー入力が続いている間はIMEの状態を表示しない=ウィンドウの色は通常のままにすればよいことになります。キー入力をやめて数秒経過したらIMEの状態に応じてウィンドウの色を変えます。
これで、文字入力中は、全く邪魔にならなくなります。表示が消えるまでの秒数はもちろん設定できるようにしていますが、私は2秒程度にして使用しています。
ただし、IMEを切り替えた直後はフィードバックのためにIME状態の色を即座に表示するようにしています。このキー入力とIME状態の変化を両立させるのは少し難しくて苦労しました。
(3)IME切り替えのキーについて
冒頭で紹介したようにWindows10自体が「無変換キー」「変換キー」でIMEを切り替えるようにしそうですが、問題がありそうですので、その問題も解決しようとしています。
具体的にはホームポジションキーパーを根本から作り直し、非常に汎用性の高いツールを作っています。汎用性が高いとは、全てのキーマップをユーザーが定義できたり、キーの操作方法に応じた動作設定ができることです。このツールにIMEの切り替えキー操作を2つ定義すれば、間違えずにIMEを切り替えることができるようになります。
こちらのツールもほぼ完成しているのですが、非常に汎用性が高い分、マニュアル作成に時間がかかりそうです。
そしてこの新しいキー操作ツールは今までにないキー操作の定義ができるので「31キーで全ての操作が可能」(数字キー、シフトキー、変換、無変換キーを使わない)を実現しています。
このようなツールの組み合わせで、今は所持している全てのキーボードで快適に入力することができるようになっています。
ようやく、ずっと潜在的に求めていた、理想のキー操作環境を実現できそうだと考えています。