チャットの誤送信問題

世の中には様々なチャットツールがあります。そして最近は生成AIとチャットのように会話することが多くなってきました。が、そこに大きな問題が発生しています。それはEnterキーを押して誤送信してしまうという問題です。この記事では誤送信問題とはなにか?誤送信を防ぐためにどのような方法があるのか?防ぐ方法があるのになぜまだ問題が解決できないのか?について書いてみます。

この誤送信問題は以前の記事「チャットツールで誤爆してしまう」でも書きました。そこでの解決方法では改行のつもりでEnterキーを押したときに送信してしまうことを完全に防ぐことができないため、今回改めてこの問題に取り組みました。

1 誤送信問題とは?

チャットツールの多くはEnterキーでテキストを送信するといった仕様になっています。これは元々チャットは改行などしない短い文章を送信するのが主目的であったためEnterキーのみで簡単に送信できるようにしたのでしょう。

しかし、実際にチャットではある程度の長さの文章を送信したい場合もあり、そのときについ改行のつもりでEnterキーを押して送信してしまうというのが誤送信問題です。日本語入力環境では更に問題は発生しやすくなります。というのも日本語入力では確定操作のためEnterキーを押すので、確定のつもりでEnterキーを押してしまうことがあります。たとえば「はい」と短く返信するつもりが、日本語入力がオフだったために「hai」「Enter」と押してしまい、相手には「hai」と送られてしまうといったことがあります。

2 チャットでは改行できないのか?

そもそもEnterキーで送信するのならば改行するにはどうすれば良いのでしょうか?それがやっかいなことにチャットツールにより異なるので更に状況は深刻になっています。あるツールではEnterで改行、Ctrl+Enterで送信であったり、また別のツールではShift+Enterで改行で、送信はEnterであったりします。これでは複数のツールを使う必要のあるユーザーが困ってしまうのも分かります。

それぞれのチャットツールの設定を変更して、できるだけShift+Enterで改行、Enterで送信に設定するなどの工夫はできますが、多くのツールを使っている場合は設定はとても面倒ですし、そもそもそのように設定できないツールもあります。チャットツールの設定でEnterキーで改行にすることはできますが、複数のツールで統一されていないこと、設定で統一しようとしてもできないツールがあることは非常に大きな制約になります。

3 下書きで解決?

そんなに面倒で問題があるのなら、いっそチャットでテキスト入力するのではなく、メモ帳など他のテキスト編集ツールを使って下書きをしてチャットにコピペするという方法がよく紹介されています。この方法であれば、メモ帳に入力している間は絶対に送信することはないので、完全に誤送信を防ぐことができます。実は、私もつい最近までこの方法を使っていましたが、いくつか問題や不満があり悩んでいました。

まず、この方法は思ったより手順が多く、ショートカットキーを駆使してもそれなりに負担がかかります。

  1. メモ帳を起動する
  2. メモ帳にテキストを入力する
  3. テキストを全部選択する
  4. テキストをコピーする
  5. チャットの入力ボックスをクリックする
  6. テキストを貼り付ける
  7. メモ帳を閉じる(必要であれば)

この手間は我慢できないものではありませんが、メモ帳を起動していることを忘れて複数のメモ帳を立ち上げてしまうことがあったり、途中で別作業が割り込むとメモ帳を再びアクティブにしないといけないなど、それなりに操作の負担があります。

また、この方法の問題点はクリップボードを経由して貼り付けを行うため、クリップボードが置き換わってしまうことです。このことは、クリップボード履歴を活用しているユーザーにとっては非常に使い勝手が悪くなってしまいます。

ということで、メモ帳などのテキストエディタを使って下書きをする方法は、確実に誤送信を防ぐことができること、送信方法が異なる複数のチャットツールを使っていても混乱することが無いなど優れた面もありますが、ショートカットキーを活用しても、それなりの操作の負担があること、クリップボード履歴が汚れてしまうことなどの欠点もあり、なんとか解決できないかずっと悩んでいました。

4 下書き操作の改善

そこで最初に工夫したのはメモ帳の起動と呼び出しを統一してみました。具体的には特定のショートカットキーを押すとメモ帳が起動し、すでにメモ帳が起動している場合はメモ帳をアクティブにして前面に表示するツールを作りました。この方法でメモ帳の起動を素早く行えるようになり、またメモ帳を間違って複数起動することも無くなり少し操作が改善されました。が、テキストの全選択(Ctrl+A)、コピー(Ctrl+C)、チャットの入力ボックスをクリック、貼り付け(Ctrl+V)の操作はやはり必要であること、そしてクリップボードはすぐにチャットのテキストで埋められてしまうという問題は残ったままでした。

5 下書き専用ツールの作成

そこで、下書きの一連の操作を行う専用ツールを作って問題を解決することにしました。とにかく下書き専用なので、できるだけ操作ステップは簡単になるようにしてみました。

  1. ツールの呼び出してエディタを起動(ショートカットキー1)
  2. テキストの入力
  3. テキストの貼り付け、エディタの終了(Ctrl+Enter)

このわずか3ステップとなりました。そして、テキストの貼り付けはクリップボードの機能を使いますが、クリップボード履歴には残さないといった工夫をしました。実際の動作を動画で紹介します。(チャットツールの代わりにメモ帳から呼び出ししています)


このツールをしばらく自分で使っていていくつか問題が発生したので次のように対応しました。

(1)呼び出し元が閉じられる

このツールは呼び出し元の窓を覚えておき、入力が完了してCtrl+Enterが押されたときに、その窓を呼び出してテキストを貼り付けています。したがって、テキスト入力している間に呼び出し元が閉じてしまうと貼り付ける先が無くなってしまいます。このときは警告を出してテキストの貼り付けは行わないようにしました。

(2)呼び出し元の状態が変わる

これはブラウザーのように一つの窓の中に複数のタブがある場合などで問題になります。つまり呼び出したときはチャットのタブを開いていたが、テキスト入力している間に他のタブに切り替えてしまった場合にテキストを貼り付けると問題になります。そこで、呼び出し元のタイトルが変更されているときは警告を出してテキストの貼り付けは行わないようにしました。

実際にこのツールを使っているときは、このような操作は行なうことはありませんが、間違って操作した場合のことを想定して窓のチェックを行うようにしました。

6 ツールの公開

このツールはChit(CHat Input Tool)という名前にしてVectorに登録申請しましたので間もなく公開されると思います。今ではチャットでちょっとしたテキストを入力するときは必ずこのツールを使うようになりました。またExcelやスプレッドシートのセルに複数行のテキストを入力するときにも便利に使っています。

このツールによりチャットツールで誤送信している人の助けになれば嬉しいです。

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